安倍晋三首相(自民党総裁)は24日、神戸市で講演し、憲法改正について「臨時国会が終わる前に、衆参両院の憲法審査会に自民党案を提出したい」と述べ、秋から年内までを想定する臨時国会の会期中に、党改憲案を提出する方針を示した。首相が同党案の提出時期を明言したのは初めて。さらに「それぞれの政党が自分たちの案を憲法審に示し、建設的な議論を行うべきだ」と訴えた。
首相は「憲法施行70年の節目である今年中に、我が党が先頭に立って歴史的な一歩を踏み出す決意だ」と表明。2020年の改正憲法施行を目指す考えも重ねて示した。
焦点となる自衛隊の明記については「9条1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持、交戦権の否認)はそのまま残し、自衛隊の意義と役割を書き込む改正案を検討する」と強調。「教育は避けて通れない極めて重要なテーマだ」と、教育無償化を検討する意向も改めて示した。また「改憲はどこかの党だけが提案し、他の党は批判するだけというテーマではない」と野党などに対案を示すよう求めた。
自衛隊の明記など4項目を検討している自民党憲法改正推進本部は、9月ごろに改憲案をまとめる方針。さらに公明党などとの調整も経て、事実上の改憲原案として年内に提案したい考えで、来年の通常国会中の5~6月に衆参両院で発議を目指す。
だが21日の同本部会合では9条2項の削除を求めるなど異論が相次ぎ、首相は改めて議論の加速化を促した形だ。ただ学校法人「加計(かけ)学園」問題や「共謀罪」法を巡る強引な国会運営を受け、安倍内閣の支持率は急落。7月2日投票の東京都議選で敗北すれば党内外の異論が勢いづく可能性もあり、議論が首相の思惑通りに進むかは不透明だ。【西田進一郎、竹内望】