医師がチョコレートが体にいい理由を説明する #3

in japanese •  7 years ago  (edited)

さて、今回でチョコレートの投稿は最後です。
今回はチョコレートの、体への効果についてご説明したいと思います!

チョコレートの効果

チョコレート.png

チョコレートの成分の項目でいくつか解説してしまいましたが、チョコレートがもたらす健康増進効果について、そのメカニズムも含めてご説明します!

メカニズムに関しましては、医学的な基礎知識がない方はちょっと難しいかもしれないので、興味のある方だけでも読んでいただければ、と思います。

血圧降下作用

チョコレートによる血圧降下効果は、多くの研究で認められています。

オランダでの大規模研究では、15年間にわたり、カカオを定期的に摂取した集団では、カカオを摂取していない集団と比べて、血圧が低下したと報告されています。*25

また、ダークチョコレートを15日間摂取した場合、高血圧の若年者(28)及び高齢者(24)が、健常者(*23)と同じレベルまで、収縮期血圧が下がったと報告されています。

一説には、増加した一酸化窒素のバイオアベイラビリティ(全身循環に到達する割合のこと)、アンギオテンシン変換酵素のフラボノール誘発阻害作用(29)、およびステアリン酸による拡張期血圧の低下などが理由かもしれないといわれています。30

血管拡張作用

多くの研究で、カカオが血清一酸化窒素値(31)および内皮一酸化窒素バイオアベイラビリティを増加させることにより、血管の拡張を引き起こすと報告しています。32

根本的な分子メカニズムは、フラボノールが血管内皮の一酸化窒素を増加させることによります。

これは、NADPHオキシダーゼの阻害を介して、遊離ラジカルが一酸化窒素の不活性化を減少させ、血管内皮一酸化窒素合成酵素(33)と抗酸化作用を活性化するとことによってひきおこされます。34

抗糖尿病作用

56dfdea70c0b7fda639634ff0d660862_s.jpg
糖尿病患者のインスリン感受性を改善するために、現在でも多くのアプローチが試みられています。*40

インスリン感受性の一部は、内皮細胞の一酸化窒素バイオアベイラビリティに依存しています。*41

よって、フラボノールは一酸化窒素バイオアベイラビリティを改善することにより、インスリン抵抗性を低下させる可能性が示唆されています。

健康な被験者(22)と高血圧の患者が、フラボノールを豊富に含んだチョコレートを摂取すると、インスリン抵抗性の低下とインスリン感受性の増加が観察されました。23

また、別の研究は、フラボノールが豊富なチョコレートを摂取した後の耐糖能障害の患者は、経口糖負荷試験でのグルコースおよびインスリン応答に対して正の影響が認められました。*42

抗ストレス作用

スイスでの研究では、チョコレートがストレスを緩和することが確認されています。

14日間のダークチョコレート摂取後、高い不安を示していた成人のストレスパラメータは、低ストレス被験者と同等にまで改善されました。*37

チョコレートには、抑制性神経伝達物質であるセロトニンの産生を促すことで、ストレスに影響を与えるとされています。*43, *44

認知症、脳卒中予防

MRIを用いた近年の研究では、カカオ摂取が脳血流量の増加をもたらし(*45)、認知症や脳卒中などの脳疾患の治療に貢献する可能性があることが示唆されました。

ラルソン博士らは、男性のチョコレート摂取と脳卒中リスクとの関連性を調査し、毎日チョコレートを摂取することが脳卒中発作のリスクを低下させると結論しました。*46, *49

ウォルター博士らは、チョコレートが脳血流を急激に改善するということも示しています。*47, *50

まだまだ仮説の域を出ませんが、いくつかの研究では、カカオが癌細胞の増殖を阻害することを示唆しています。*51, *52

現段階では、正確な抗癌メカニズムは、明確にわかってはいません。

一方で、チョコレートの過剰摂取は人を癌に発展させる傾向があることも示唆しています。*53, *54

抗炎症作用

チョコレートは、酵素リポキシゲナーゼの活性部位に直接結合することにより、リポキシゲナーゼ経路を阻害して、抗炎症作用を示します。*55

まとめ

と、まぁここまで、いろいろな作用をご説明してきました。
「血圧降下作用」に関しては多くの研究で証明されていて、ほぼ間違いないでしょう。
そのほかの「糖尿病」「認知症」「脳卒中」などに対する作用は、報告はされていますが、まだまだ確実とはいえない感じですね。

注意していただきたいのは、
ミルクチョコレートやホワイトチョコレートは、砂糖やミルクがたくさん入っていて、悪い影響も大きいということです。
あくまで、カカオの多いダークチョコレートがこういった作用がある、ということですね。

ぜひダークチョコレートを食べて健やかに、とろけるような人生を楽しみましょー!笑

参考文献
22)[Free Radic Biol Med. 2006; 41: 1727-46]- Lotito SB, Frei B.
23)[Am J Clin Nutr. 2005; 81: 611-4]- Grassi D, Lippi C, Necozione S, Desideri G, Ferri C.
24)[JAMA. 2003; 290: 1029-3]- Taubert D, Berkels R, Roesen R, Klaus W.
25)[Am J Clin Nutr. 2008; 88: 38-50]-Hooper L, Kroon PA, Rimm EB, et al.
26)[Am J Clin Nutr. 2008; 88: 58-63]-Faridi Z, Njike VY, Dutra S, Ali A, Katz DL,
27)[Arch Intern Med. 2006; 166: 411-417]-Buijsse B, Feskens EJ, Kok FJ, Kromhour D.
28)[Hypertension. 2005; 46: 398-405]-Grassi D, Necozione S. Lippi C, et al.
29)[J Agric Food Chem. 2006; 54: 229-34]- Actis-Goretta L, Ottaviani JI, Fraga CG.
30)[Hypertension. 1996; 27: 303-7]- Simon JA, Fong J, Bernert JT Jr.
31)[Proc Natl Acad Sci U S A. 2006; 103: 1024-9]- Schroeter H, Heiss C, Balzer J, et al.
32)[J Hypertens. 2006; 24: 1575-80]- Fisher ND, Hollenberg NK.
33)[J Nutr. 2000; 130: S2105-8]- Karim M, McCormick K, Kappagoda CT.
34)[J Hypertens. 2003; 21: 2281-6]- Fisher ND, Hughes M, Gerhard-Herman M, Hollenberg NK.
35)[Thromb Res. 2002; 106: 191-7]- Pearson DA, Paglieroni TG, Rein D, et al.
36)[Am J Clin Nutr. 2000; 72: 30-5]-Rein D, Paglieroni TG, Wun T, et al,
37)[J. Proteome Res. 2009; 8: 5568-79]- Martin FPJ, Rezzi S, Pere-Trepat E, et al.
38)[Heart. 2006; 92: 119-20]- Hermann F, Spieker LE, Ruschitzka F, et al.
39)[Am J Clin Nutr. 2001; 73: 36-40]- Schramm DD, Wang JF, Holt RR, et al.
40)[Int J Clin Pract. 2003; 134: 28-35]- Ryan DH, Diabetes Prevention Program Research Group.
41)[Diabet Med. 2003; 20: 838-45]- Konopatskaya O, Whatmore JL, Tooke JE, Shore AC.
42)[J. Nutr. 2008; 138: 1671-6]- Grassi D, Desideri G, Necozione S, et al.
43)[http://psychcentral.com/blog/archives/2009/04/27/]- Walcutt DL.
44)[Public Health Nutr. 1999; 2: 403-9]- Benton D, Donohoe RT.
45)[J Cardiovasc Pharmacol. 2006; 47(suppl 2): S221-3]- Francis ST, Head K, Morris PG, Macdonald IA.
46)[Neurology WNL. 0b013e31826aacfa; published ahead of print, 29 August 2012]- Larsson SC, Virtamo J, Wolk A.
47)[http://www.neurology.org/content/early/2012/08/29/WNL.0b013e31826aacfa.abstract/reply#neurology_el_55876]- Walters MR, Williamson C, Lunn K, Munteanu K.
48)[Br J Clin Pharmacol. 2013; 75: 716-727]-Nehlig A.
49)[Atherosclerosis. 2017; 260: 8-12]-Dong JY, Iso H, Yamagishi K, et al.
50)[Int J Cardiol. 2009; 131(3): 424-429]-Shiina Y, Funabashi N, Lee K,et al.
51)[Cancer Lett. 2002; 175: 147-55]- Carnesecchi S, Schneider Y, Lazarus SA, Coehlo D, Gosse F, Raul F.
52)[J Org Chem. 2003; 68: 1641-58.]- Kozikowski AP, Tuckmantel W, Bottcher G, Romanczyk LJ Jr.
53)[Int J Cancer. 1991; 48: 1-9]- Richardson S, Gerber M, Cenee S.
54)[Eur J Cancer Prev. 1999; 8: 229-35]- Boutron-Ruault MC, Senesse P, Faivre J, Chatelain N, Belghiti C, Meance S.
55)[J Nutr. 2002; 132: 1825-9]- Schewe T, Kuhn H, Sies H.
この投稿に利益相反はありません。

Authors get paid when people like you upvote their post.
If you enjoyed what you read here, create your account today and start earning FREE STEEM!
Sort Order:  

ダークチョコレート凄い!
私はダークチョコレート大好き派なのですが、ミルクチョコレートよりも砂糖が多く入っている場合が多いので気をつけています
こんなにメリットあると、ダメなのわかってるけど食べ過ぎちゃいそうw

そうですね笑
砂糖の多いものは要注意です笑

ミルクよりダーク好きだったのでよかったです。色々と良い作用があるんですね。知りませんでした。

そうなんですよー
おやつに食べるならダークチョコレートですね!

めっちゃ為になりましたw

良かったです笑
意外と知らないこと多いですよね!私も調べるまで知りませんでした

ダークチョコレートの効果がこんなにあるなんて知りませんでした!
また過剰摂取は癌に発展する傾向があるなんて…やはりバランスの良さが大事なんですね。vote&followさせていただきました!

ありがとうございます!
んー発癌に関しては統一した見解はないですね!まだ仮説の域をでません。
はっきりわかっているのは血圧を下げるということでしょうか!

  ·  7 years ago (edited)

はじめまして!私が今住んでいるオーストラリアでは何年も前からダークチョコレートが人気です。ダークチョコとココアにはantioxidant(酸化防止剤)が他の食物より多く含まれるということで、各メーカーがこぞってダークチョコを発売しています。こちらは肥満の人が多いですが健康には気を使っているんですよね。次の記事も楽しみにしています。フォローさせていただきます。よろしくお願いします。^^

はじめまして!オーストラリアでは人気なんですね!
日本でも最近は以前より人気になってきましたねー^^

フォローさせてもらいました!
どうぞ宜しくお願いします。
チョコを買う時は70%以上を心がけて買いたいと思います✧‧˚

ありがとうございます!
はい!ぜひ試してみてくださいー!