落語の「できごころ」は、家賃の安い長屋に押し入った愚かな泥棒が、何も盗むものがないことに気づくという話です。
ちょうどそのとき、住人のハチ公が帰宅し、泥棒は玄関の下のスペースに隠れます。
しかしハチ公は、家賃を払わない言い訳として強盗事件を利用することに決め、家主を家に招き入れる。
ハチ公と家主の面白いやり取り。
家主はハチ公に盗まれた品物を詳しく説明するよう要求する。
布団の裏地(日本語で「裏」)の色を聞かれたハチ公は、何を言っているのかわからず「花色もめん」と口走った。これはたまたま家主の布団の裏地の色で、江戸時代(1603-1867)によく使われていた青い布だった。
自信をつけたハチ公は、蚊帳や鉄瓶、お札など、裏の付いていない物にさえも、裏のことを「花色木綿」と言い始める。
この間抜けな会話は笑いを誘うが、ハチ公の「すべての物事には裏がある」という観察、つまり、目に見える以上のものが常にあるという観察は、驚くほど真実味を帯びている。
そして、それはまさに、裏金スキャンダルに関与したとして、次期衆院選で一部議員の「公認を見送る」という与党自民党の主張に当てはまった。
自民党が、まさに「処分を受けた」とされる候補者が支部長を務める各支部に2000万円(13万1750ドル)を支給していたことが明らかになった。
自民党の森山裕幹事長は「支部への支払いは党員拡大のための活動費として支払われた」と説明した。
しかし、それは間違いなく、それらの候補者を「非公式に」支持するに等しいことだったはずだ。
そもそも政党助成金制度は、疑わしい政治献金を排除するために設けられ、国民の税金で賄われている。自民党は、本当に国民がこのような使い方に同意すると信じているのだろうか。
ちなみに、政党助成金制度と引き換えに廃止されたはずの企業献金は、いわば裏口から流れ続けている。
裏金スキャンダルは適切に説明さえされていない。政治は絶望的に不透明なままだ。
上記の落語の最後で、泥棒は隠れていたところから出てきて、「思いつきでやったんだ」と告白します。
彼の誠実さはすがすがしい。
—朝日新聞10月25日