ロジハラと呼ばれるべきものはないはずだ
昨今,いろんなことがハラスメントの前についています.大学生が言う事ではないでしょうが,世にいう上司と呼ばれる人たちは戦々恐々としていないか心配です.
そこで,ロジハラについて考えてみると,そもそもロジハラと呼ばれるべきハラスメントはないと考えに至りました.
そのうえで,どうしていわゆるロジハラに陥るのか考えてみました.
ロジハラの本質はロジカル(論理)にはない.
そもそもロジハラとはなんでしょうか.
ロジハラとはロジカルハラスメントの略で、正論を突きつけて相手を追い詰めること
御代貴子,”ロジハラ(ロジカルハラスメント)とは?原因や対処法を解説”,https://mba.globis.ac.jp/careernote/1453.html,GLOBIS CAREER NOTE,2024-09-18
はて,正論は悪いことでしょうか.ハラスメントというのは一般に業務上に行われる「相手に不快感を与えること」です.本来正論は相手に不快を与えません.
不快を与えているのは「追い詰める」という点.つまり,悪いことは追い詰めることなのです.
ロジハラ⊂パワハラ
では,同じハラスメントの中の代表例,パワーハラスメントの定義について見ていきましょう.
職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
厚生労働省,”ハラスメントの定義”,https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/definition/about,明るい職場応援団,更新日不明
ロジハラも一般に上司から部下に対して行われるものなので①,そもそも業務上必要かつ相当な範囲を超えたものでなければハラスメントでさえないので②,当然ながら③も成立します.
つまり,論理記号で表せばロジハラ⊂パワハラなわけです.ロジハラはおしなべてパワハラなんです.
わざわざ論理を悪者扱いするような呼び方をすべきではない
わざわざロジハラとよばれると,パワハラの中でもロジハラが悪いようにみえます.でも本当にそうでしょうか.それが本当に論理的ならばいわれのないことを言われたわけではないはずです.逆にロジハラでないパワハラはいわれのないようなことを言われている.一般に誹謗中傷といわれるようなことです.
どちらかと言えば,そちらの方が悪いはずです.
ロジハラという言葉があることは,論理的な発言を抑制しうるものです.本来業務上の指導は論理的でしかるべきです.単に反省を促すだけならば論理性は求められません.しかし,ビジネスでは再発防止が求められるはずです.当然,再発防止策を考えるには論理的思考が必要ですからロジカルである必要があるのです.
パワハラと呼べばいいものを,わざわざロジハラと呼ぶことは,論理的発言を抑制し,企業・従業員双方の成長を遮るものになりかねません.
それでもなぜロジハラと呼ぶのか
そもそも,パワハラに内包される概念がロジハラと呼ばれたのはなぜでしょうか.ここからは完全な憶測でしかありませんので,論理もクソもないのですが…
恐らく論理への嫌悪感が「ロジハラ」という言葉を生んだのだと思います.
AならばB BならばC ではCならばAなのか?….と論理的に考えることは人によっては辛いことです.
一方で論理的思考が得意な人は普段から「失敗してしまった.次はどうすればいいだろうか」とか「これはなぜ流行ったのか」とか普段から無駄に論理的に考えていたりします.それがゆえに論理的に思考できるということは,人間にとって標準搭載の機能かのように,当たり前のこととして捉えているのです.
ですから,論理的に思考することが辛い人に強くあたってしまう.論理的思考を押し付けてしまう.
「当然考えられるはずだから自分の論理が間違っていたら論理的に反論されるはずだ.」そう考えてしまいがちです.
でもそれは相手からすれば,正論を突きつけたと思われるわけです.そりゃ当然論理に嫌悪感を覚えますよね.
ロジハラをしがちな人
ロジハラをしがちな人として,「自分が正しいと思っている人」といわれています.が,こういったことを考えると「相手も論理的に考えているはずだ」と思っている人の方が論理を押し付け,相手が疲弊するという状況に陥りがちになり,結果的にパワハラをしてしまうのではないかと思います.私もそうですが,論理的思考というものに病気的なほど囚われている人のことです.
最近『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』という本を読みました.(おすすめです)「伝わらないのは相手に異なるスキーマ(枠組み)があるためだ」というのが雑な要約なのですが,「あらゆることを論理的に考える」というのもスキーマだと思います.
人にどうすべきか考えてもらうには,相手には違うスキーマがあるということを肝に銘じたうえで,こちらの側も相手の側も冷静になって,「次に生かそう」とか言ってから,「どうすべきだと思う?」「なぜこうしたの?」と訊いていくのが重要なのだと思います.